2015/03/26

いただきストリート~私のお店によってって~


【発売】アスキー
【開発】ログインソフト、ゲームスタジオ
【発売日】1991年3月21日
【定価】6,800円
【媒体】ファミコン用バックアップカートリッジ
【容量】2M+64KRAM
【ジャンル】テーブル
【周辺機器】ターボファイル対応




ひとりでも一生遊べる戦略ボードゲーム


【概要】
 『北海道連鎖殺人オホーツクに消ゆ』の主要スタッフが手がけたボードゲーム。運任せのスゴロクとは異なり、エリアごとの店の買い占めや増資、株や不動産取り引きといった『モノポリー』(パーカー・ブラザーズ社)を原型とする戦略性の高さが特徴。また、個性付けされたAI(人工知能)搭載のキャラクター達により、対コンピュータ戦の面白さもこのゲームの大きな特徴である。最大4人同時対戦が可能。

 ゲームデザインの堀井雄二氏、キャラクターデザインの荒井清和氏、音楽の上野利幸氏、ロゴデザインの佐藤英人氏、フォントデザインの二木康夫氏、プロデューサーの塩崎剛三氏は『オホーツクに消ゆ』のメンバー。また、プログラムは大森田不可止氏、プログラムスーパーバイザーには『ゼビウス』(ナムコ)の遠藤雅伸氏(現ゲームスタジオ代表取締役)も名を連ねる。ログインソフトブランドという事で今作も月刊ログイン及びファミコン通信(現週刊ファミ通)のスタッフから、マップデザインに槍田準次氏(ヤリジュン先生)が参加している。当時のアスキー雑誌大好きっ子のみ「へー」と言ってくれればそれでいいです。


【ゲームシステム】
 ゲームの目的は単純。サイコロを振り、お金を稼ぎ、目標金額に達して最初にゴールしたプレイヤーが勝ちとなる。誰かが破産した場合はその時点で最も資産が多いプレイヤーの勝ち。止まったマスの店を買ったりしながら4つの「チャンスカードマーク」を集めて銀行へ行くと、「サラリー」がもらえる。これで1周。こーゆーゲームは文字で長々説明するよりも、実際にプレイする方がルールを覚えられる気がするんだけど、まあ、基本的にはわりかしシンプルなのだ。ストリートは全部で5、コンピュータは全7キャラクター。



 店のマスは4~5店で1つの「エリア」になっていて(マスの上半分に描かれたグラフィックで判別)、止まった店を無闇に買いまくるよりも、同じエリア内に複数の店を持つ方が有利となる。同じエリアに自分の店が増えるごとに店自体の値段と相手が止まった時の支払い料金が上がり、エリア全てを買い占めれば、どちらの金額も一気に跳ね上がるからだ。場合によっては「ここに止まったら一発で破産!」なんて店にもできる。右の写真では、ピンク色(自分)は、コーヒーカップのエリアには1店しか持っていないので、支払い料金は「23」、店の値段も「152」しかない。だが、パソコンのエリアは全て買い占めているため、店の値段も支払い料金も最大四桁という無慈悲なエリアと化しているのだ。

 とは言え、サイコロの目はランダムかつ常にセーブされているため、リセットボタンを押しても目を変える事はできない。同じエリアを買い占めるには、相手と取り引きして店の売買や交換をする必要がある。また、「5倍買い」という強硬手段も用意されている。これは文字通り、店の値段の5倍以上の資産(現金+株)がある時にのみ可能で、買われた方は同一エリアにある店の値段と支払い料金が一気に半値まで下がるため、エリア買い占めとは別に自己防衛手段としての効果もある。ただし、対人戦で使うと経験上もれなく場の空気が微妙になり、しばらく人間関係がギクシャクしたままゲームを続けなければならないので注意!

 そして、『いたスト』一番のキモが「株」だ。自分の店があるエリアの株を買い、そのエリアの店に「増資」する事で株価が上がる。買い占めたエリアであれば増資しまくるだけで一財産築く事もできる。そう、現実では禁止されている「インサイダー取り引き」がゲームの中では正当な手段とされているのだ。もちろん、他のプレイヤーが増資しそうなエリアの株を先に買っておき、漁夫の利を得る事もできる。この後でタイミングを図って大量に株を売り払えば相手の株価が下がり、人間関係と引き換えに増資したプレイヤーの資産にダメージを与えるなんつー事もできるぞ。友達なくすけど。

 何かと気を遣う対人戦とは異なり、対コンピュータ戦では気遣い無用で遊べる。ファミコンでAIが注目されたのは前年に発売された『ドラゴンクエストIV~導かれし者たち~』(エニックス)で、これは戦闘時に味方キャラクターの行動をオート化できるというものだったが、実際にはそう賢くなくてあまり使えなかった。『ドラクエ』の作者でもある堀井氏はこの反省から、『いたスト』のキャラクターに搭載するAIには徹底的にこだわったという。3年の開発期間中、実に2年がAIの開発と調整に費やされた。その甲斐あって、プレイヤーの相手をする7人のコンピュータキャラクター達はそれぞれに個性を持ったプレイで対抗してくる。初心者でも優しく安心な高校1年生の「高瀬まりな」、白いシャツを着せて水かけたい清純そうなOL「高杉ともみ」、すっげーきついスカート履かせてケツぱっつーんとかしてやりたいコンパニオンの「水沢けいこ」、放課後の個人レッスンなら女子大生「藤森さゆり」。他にあと男が3人いるがこちとら慈善事業やってんじゃねーんだ、男の説明なぞするか!←ヒドイ。


【総評】
 グラフィックこそ地味だが、完成度の高い練り込まれたシステムと個性豊かなキャラクター達のおかげで、何度も繰り返して一生遊べるボードゲームになっている。運任せではない戦略性の高さから、対人戦は言うに及ばず。現在でも多くのプラットフォームで続編が発売されているが、2作目以降は版元がエニックス(現スクウェア・エニックス)に移り、キャラクターや装飾が『ドラクエ』や『ファイナルファンタジー』などに置き換えられているため、荒井氏のキャラクターと上野氏の音楽が好きな僕は他の続編はやっていないのだった。

 ウィークポイントとしては、プレイヤーの名前に捨て仮名や濁点が使えない点。91年発売のソフトとしてこれは少し気が効かないなぁ。また、セーブファイルが1つしかなく、そのバッテリーバックアップもちょっと弱い気がする(これはカートリッジの固有差かもしれない)ので、アスキーの外部記憶装置「ターボファイル」があると幸せになれるヨ!中古相場ではカセットのみなら500円前後なので、複数買うのもアリかもしれない。

 『いたスト』が発売された時はちょうど中学を卒業したばかりで、僕の周りではどんどんゲームからも卒業していく友達が多かった。親から今までで一度だけ「ゲームなんて子供が遊ぶモノは卒業しなさい」的な事を言われたのもこの頃だ。徒歩通学圏内の小中学校から一変、高校は隣の市までバスと電車で通わなければならず、人生最初の環境が大きく変わった頃だったため、自分の中で「変わらないもの」を拠り所にしようと、一時期ずーっと1人で『いたスト』ばっかやってたなぁ。今でもちょくちょく遊んでるけど、電源を入れてタイトル画面の曲を聴く度になーんかあの頃を思い出すのだ(特にオチはない)。


【2021.11.6.追記】
 本作のプログラムを担当された大森田不可止氏が、10月後半に急逝されました。謹んで哀悼の意を表します。




Music
『いただきストリート サウンドマップ』








【作曲】上野利幸
【編曲】上野利幸、戸田誠司
【発売】アポロン音楽工業
【発売日】1991年3月5日
【定価】2,600円
【収録時間】約42分


 上野利幸氏によるシンセサイザーアレンジのサウンドトラック。

どういう経緯なのかは分からんが、FAIRCHILDのベースで音楽プロデューサーの戸田誠司氏がプロデュースし、ライナーノーツには「ゲームから少し離れたとしても、その曲が一番素敵になる様に作った」と不安にさせる一文が書いてある。これまでの経験上、ゲームに関わっていないミュージシャンがゲームオリジナルのイメージを無視してどうしようもねえ自己満足アレンジを施してどうしようもねえ曲に改悪されたどうしようもねえゲームアレンジ盤が吐いて捨てるほどあり、そういうどうしようもねえアルバムには大抵こんなどうしようもねえ事が書いてあるからだ。が!このアルバムは『オホーツクに消ゆ』同様、上野氏によるゲームミュージックの正統派アレンジ盤に仕上がっている。驚かせやがって戸田誠司、いい仕事するじゃないか!偉そうな事書いてごめんなさい!

劇中のBGMを10トラックに編曲しており、確かに素敵なアレンジになっている。ライナーノーツには戸田氏の曲解説の他、堀井氏の寄稿もある。既に廃盤で生産数も少ないのか、現在では1万円前後のプレミアが付いてしまってるのが難点。どうでもいいけど、背や帯には「サウンドマップ」と表記してあるのに、ジャケットのみ「サウンド・マップ」とナカグロが付いてるのが気になるんだぜ。どっかいっちゃったけどステッカー付き。

【収録曲】
01.Afternoon Tea (ハワイ)
02.Is 'RND' s (マハラタ諸島)
03.Laughing Point (取り引き)
04.Little Property,Little Care (おのころ島)
05.Over and Over (右半球)
06.Cards (チャンスカード)
07.When We're Together (アメリカ大陸)
08.Outer Space (宇宙星雲)
09.うちへ帰ろう (スタッフロール)
10.So Long (エンディング)


【2017.1.17.追記】
 本作の制作に携わられた上野利幸様より、本エントリーをTwitterで紹介して頂きました。「当時耽溺していた"Real Fish"の戸田さんに無理を言ってお願いした、が正しい経緯です。アポロン担当Dのご尽力にも感謝」とのコメントを頂戴致しました。貴重な情報をお教え下さってありがとうございます。上野様の最新情報はメガギガテラスからご覧頂けます。




Books
『いただきストリートのすべてがわかる本』










【著】ファミコン通信編集部責任編集
【発売】アスキー
【発売日】1991年5月20日
【定価】450円


ファミコン通信編集部責任編集の「すべてがわかる本」シリーズ。

取扱説明書でイラストを描いている菊池晃弘氏によるルールの解説マンガや堀井氏のインタビュー、各ストリートの詳細なデータなど、手堅い作り。『いたスト』自体があまり攻略パターンなんつーものを必要とされないジャンルなので、全体的には説明書の内容を更に詳しくした感じに落ち着いている。だもんで、あまり使ってないからわりと美品状態なのだ。表紙は荒井清和氏の描き下ろしだが、マップやデータが詰め込まれたA6判64ページの紙面には余裕がなく、せっかくゲームを作った会社が出した本なのに、キャラクターのイラスト類が少ない。そんな残念なキモチは、荒井氏の『べーしっ君』3巻に4本掲載されている『いたスト』ネタを読んで補完しよう!



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