2015/12/01

迷宮組曲 ミロンの大冒険

【発売】ハドソン
【開発】ハドソン
【発売日】1986年11月13日
【定価】4,900円
【媒体】ファミコン用カートリッジ
【容量】512Kbit
【ジャンル】アクション




音楽面の演出が光るハドソンらしい良作


【ストーリー】 
 ミロンの住むエプシロン星の住人は、 互いに触れるだけで相手の気持ちを理解する事ができたため、文字や言葉は発達しなかった。離れた人に自分の気持ちを伝えるには、音楽が使われた。人々は楽器を使って自由に会話を交わした。しかし、ミロンにはその能力がなかった。「どうしてボクだけ人の気持ちが分からないんだろう?どうしてボクだけ楽器をうまく使えないんだろう?もしかしたら、ボクはこの星の人間ではないのかもしれない。もしかしたら、ボクみたいな人間がまだこの星にいるかもしれない…」そう思ったミロンは、仲間を探す旅に出る事にした。

 その頃、ミロンの住む村に危険が迫っていた。村の長老はその危険を周りの7つの谷に伝えるために伝令を送ったが、誰一人として応える者はなかった。ミロンは旅のはじめにこの謎を解くため、7つの谷を治める王女エルシラに会う事にした。しかし、街に着いたミロンが見たものは、楽器を魔人に奪われて困っている人々の姿だった。北の果てに住む魔人が王女の住むガーランド城を占領して、王女を城の奥深くに閉じ込め、街中の楽器を隠してしまったのだ。 魔人退治を買って出たミロンに街の司祭は言った。「城にはこんな時のために様々な道具が隠されています。このシャボンがあなたに隠し場所を教えてくれるはずです。どうか王女を助け出して下さい」ミロンはガーランド城の謎を解き、奪われた楽器を取り戻して、王女を助け出す事ができるだろうか…。


【概要】
 ハドソン(現コナミデジタルエンタテインメント)の少数スタッフが開発したアクションゲーム。メルヘンチックな世界観の中、「音楽」を題材にしている。特にボーナスステージの演出は秀逸で、最初はドラムのみだったのが、ステージを重ねるごとにシンバル、チューバ、オカリナ、ハープ、トランペット、バイオリンと楽器が増え、全てが揃ったボーナスステージでは、7つの楽器によるアンサンブルが聴けるのだ。また、当時のゲームっ子達の間では高橋利幸氏っていうか高橋名人(現ドキドキグルーヴワークス代表取締役)の「16連射」が話題となっていた時期なので、タイトル画面には本編とは関係がない「連射測定機能」が付いている。


【ゲームシステム】
 サイドビュー形式のアクションゲーム。全14ステージ。主人公「ミロン」を操り、4階層の「ガーランド城」を探索しながら王女を助け出すのが目的。ガーランド城の外壁にはいくつもの扉があり、敵がうごめくステージやショップ、魔獣の部屋などに通じている。ステージ内では隠されているカギとドアを見つけないと脱出できないが、1度カギを取ったステージは何度でも往来できる。武器はシャボンで、斜め方向の上下に撃ち分けができ、アイテムを取れば最高3連射まで可能となる。隠されたコインを集めてアイテムを揃えつつミロンを徐々に強化し、各階層にいる魔獣を倒しながら、王女が捕らわれている4階を目指す。


【総評】
 『ボンバーマン』、『スターソルジャー』、『高橋名人の冒険島』と、ハドソンがノリにノってる時期に発売されただけあって、本作もまた活き活きとした作品に仕上がっている。マニア向けではなくファミコンのユーザー層に向き合いながらも、まとまった世界観と媚びない難易度が非常にハドソンらしい。また、アクションRPGとパズルゲームの要素を採り入れつつもうまくまとめている、現在でもファンが多い名作のひとつだ。

 ガーランド城の外壁から城内のステージを行き来する本作は、プレイヤーに城の全体像を見せる事でゴールへの意識を明確にさせる効果と共に、箱庭感覚の楽しさも味わえる。また、ガーランド城のグラフィックだけ見ても、ゲーム本編では描かれないミロンとそれを取り巻く世界観の一端を想像させてくれる効果的なグラフィックだ。ハドソン退社後も童話的な世界観を大切にしている本作を手がけた笹川敏幸氏(現ムーンライトミュージック代表)らしさが表れている。

 そして、タイトルの「組曲」たるボーナスステージの心憎い演出。同時発音数が3音しかないファミコンのPSG音源だけで7つの楽器によるアンサンブルを見事に表現した、サウンドプログラムの技術とセンスが光りまくる演出だ。本作はコンセプト、シナリオ、キャラクターデザイン、プログラム、サウンドプログラム、効果音の全てを笹川氏が1人で手がけている。なので、てっきり本作のサウンドも笹川氏の手によるものかと思っていたが、こちらは『チャレンジャー』や『スターソルジャー』などを手がけた国本剛章氏がメインBGMを、ボーナスステージのBGMは『桃太郎伝説』などの井上大介氏という笹川氏が抜擢した2人が作曲したそうだ。

 一方、その見た目や世界観とは裏腹に、難易度は高い。と言っても、決して理不尽な難しさではない。確かに魔獣のランダムな攻撃方法には手こずるが、それよりも本作最大のネックはコンティニュー方法にある。アイテムやパワーメーター(ライフ)の最大値など、徐々にミロンを強くしていくが、1階の魔獣を倒すまではコンティニューができない。倒した後はアイテム「クリスタル」が手に入り、ゲームオーバー時に十字キーの左+スタートでコンティニューが可能となるが、そもそもゲーム中にこの説明は一切なく、知らないプレイヤーはまずここで断念する。

 再開しても毎回パワーメーターが半分以下の状態からリスタートとなる。敵を倒せばランダムでパワーメーターを1メモリ回復するハートが出現するが、いかんせんライフを満タンにするこの「戻し作業」に時間がかかるのだ。高めの難易度と手間のかかるコンティニュー方法に当時投げ出した人も多いはず。

 それでも、良作なのは間違いない。もしくは良い意味で「ファミコンらしいゲーム」と言った方がしっくりくるかもしれない。現在でも中古市場では300円前後と入手しやすく、Wiiとニンテンドー3DSのバーチャルコンソールでもダウンロード販売されている。また、05年にゲームボーイアドバンスで発売された『ハドソンベストコレクションVol.3 アクションコレクション』にも収録されている。個人的には93年にゲームボーイへ移植された『ミロンの迷宮組曲』も気になっているので、いつか手に入れてプレイしてみたい。


(C)1986 HUDSON SOFT 

0 件のコメント:

コメントを投稿