2016/05/31

ダライアスII

 
【発売】タイトー
【開発】ナツメ
【発売日】1990年12月20日
【定価】8,900円
【媒体】メガドライブ用カートリッジ
【容量】8M
【ジャンル】シューティング




単なるダウングレード移植ではないメガドラ版の熱意


【ストーリー】
 かつて高度な文明を誇ったダライアス星は滅びてしまった。プロコとティアットの2人はダライアス星を脱出し、新天地を求めて惑星オルガで新世界を築いた。数千年後、プロコとティアットの子孫は、銀河系から発信される怪電波をキャッチ。その怪電波は、祖先の暮らしていたダライアス星からのSOSだった。怪電波の正体を突き止めた彼らは、強力に改造されたシルバーホークに乗り込み、銀河系へ向かって出発。ダライアス星人の危機を救うため、銀河系の惑星上で、宇宙空間でと、厳しい戦いを続けていく。シルバーホークに乗り込んだキミは、この救出隊のメンバー。さあ、いよいよ戦闘開始!


【概要】
 オリジナル版は89年にタイトー(現スクウェア・エニックス)がアーケードで発売した横スクロールシューティングゲームで、『ダライアス』シリーズの2作目。アーケード版では2画面のモニターを連結した専用筐体と、前作『ダライアス』の3画面連結筐体を流用したバージョンが存在する。メガドライブへの移植はナツメ(現ナツメアタリ)が担当。海洋生物をモデルにした敵キャラクター、1ラウンドクリアするごとに分岐するステージ構成などの特徴はそのままに、画面の上下に黒帯を入れて「擬似ワイド画面」となる様に工夫されている。


【ゲームシステム】
 パワーアップ型横スクロールシューティングゲーム。オリジナル版では2人同時プレイが可能だったが、本作は1人プレイ専用に変更され、自機が「シルバーホーク赤(プロコJr.)と「シルバーホーク青(ティアットヤング)」の選択式となった。シルバーホーク青は初期状態で各武装が1段階パワーアップされたビギナー向けの機体になっている。各武装は特定の敵を全滅させると出現するパワーアップユニットを取る事で攻撃力がアップ。ステージ構成は全7ラウンド28ゾーン。ラウンドクリア後の分岐画面で次に進むゾーンを選択する。各ゾーンの最後にはボスが待ち構えており、進んだゾーンによって結末が異なるマルチエンディング。


【総評】
 88年から90年にアーケードで発売されたシューティングゲームには、後に「名作」と呼ばれる作品が多い。コナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)の『グラディウスIII-神話から伝説へ-』、『XEXEX』、アイレム(現アイレムソフトウェアエンジニアリング)の『イメージファイト』や『R-TYPEII』、セイブ開発の『雷電』(発売はテクモ)などなど。「シューティングの雄」タイトーも主に東亜プランが手がける『TATSUJIN』、『ヘルファイヤー』、『大旋風』などを積極的にリリースしている。一見すると豊作期に思えるが、結果的にはこれら名作が91年以降のアーケードゲームシーンで格闘ゲームに王座を奪われた遠因ともなった。いや、実際はどうか分かんないすけど←テキトー。

 アーケードゲームの基本命題は、ジャンルに関わらず「ユーザーにいかに金を使わせるか」という点にある。それまでにも高難易度をよしとするシューティングゲームはいくつもあったが、88年からの3年間は主だったシューティングゲームのほとんどが適正難易度を遥かに超えた「凶悪」と言っていいほどの高難易度となり、やがては一部のマニア向けジャンルになってしまったのだ(後にいわゆる「弾幕系」と呼ばれるゲームも登場するが、それはまた別の機会に)。この『ダライアスII』も名作が故にその凶悪な難易度に拍車をかけたゲームのひとつだった。

 家庭用ゲーム機への移植に際し、メディアがCD-ROMになって以降は「オリジナルと寸分違わぬ移植こそ正義」という風潮だが、制約の多いカートリッジの時代ではダウングレードが当たり前だったため、オリジナル要素の取捨選択センスと技術力が求められた。ハーフミラーを連結した筐体は物理的に不可能だが、移植を担当したナツメは、各キャラクターが小さくなってしまう代償を払っても、画面をシネスコサイズに近い形にしてオリジナル版のワイド感を表現した。一方で、ゾーンKとMのボス「ヤマト」は、オリジナル版に近い迫力を再現。このために当初予定の6メガから8メガに容量が増やされたとも言われている。

 インパクトのある筐体や敵キャラクターのビジュアルと並び、BGMもまた『ダライアスII』の大きな特徴のひとつだ。およそシューティングゲームに似つかわしくない曲の数々と、強制スクロールというシューティングゲームの特徴を活かしたBGMによるステージ演出は、これまた強烈な個性としてファンが多い。例えば、最終ステージでは中ボス戦まで一切の効果音がなく、切なく美しいメロディーが流れ、曲調が変わると同時に効果音が復活なんつーイカした演出はプレイしていて鳥肌が立つほど。ただ、ファンの方には申し訳ないが、僕はこの『ダライアスII』の曲がどうも苦手なのだ。タイトーのサウンドチームであるZUNTATAのアレンジCDを聴いてもしっくりこなかったし、今回改めて聴いてみてもやっぱり同じ感想だった。ごめんなさい。とは言え、ファンの間ではこのメガドライブ版のサウンドも評価が高い。本作のBGMは、後に『グランディア』(ゲームアーツ)のBGMや東京ディズニーリゾートのパレード曲を手がけた岩垂徳行氏が、1曲できる度にオリジナル版を作曲したZUNTATAの小倉久佳氏の元に通って作り上げたそうだ。

 取捨選択によるワイド感の再現と、代償となったキャラクターの縮小化。それを補うべく意地とも言えるヤマトの再現。オリジナル版と移植版のコンポーザー同士による熱意のBGM。効果的な画面演出はそのままに、家庭用ゲーム機ならではの難易度選択を追加して(イージーが適正難易度だと思う)幅広いユーザーが楽しめる仕様にするなど、単なるダウングレード移植ではないメガドライブ版としての『ダライアスII』は、『スペースインベーダー』の開発者である西角友宏氏(現ドリームス会長)がプロデューサーに名を連ねる、現在も脈々と受け継がれるタイトーのシューティング魂と、デベロッパーとしてのナツメの技術とセンスが宿った名作と言っていいだろう。



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